渡辺邦夫ブログ

医療法人もみの木会 わたなべ整形外科 院長 渡辺邦夫のブログ

2012年06月

先日、新聞の論説記事の中に「クスリとは、逆さに読めばリスクである。 」というフレーズがありました。

これを読んだクスリ嫌いの患者さんは、我が意を得たり、とばかりに拍手喝采かと思います。ニコニコ

確かにクスリに副作用は付き物です。たとえば高血圧などの場合、日常生活の指導だけではどうしてもコントロールできない方にクスリを処方しようとする時、「このクスリは一度飲み始めると、ずっと飲まなくちゃあいけないんでしょう?クスリの副作用も怖いし飲みたくありません。」という方が多くいらっしゃいます。

しかしよく考えてみると、クスリを飲んで長生きするか、飲まずに早死にするか、どちらがいいですか?ということが問われているのであって、ここは冷静に服用することを選択すべきかと思います。最近の医学の進歩は目覚ましく,副作用の発現を最小限に抑え込んだ、有効で安全な薬剤が次々に開発されています。

さて、私が日常診療で患者さんの治療をする際いつも心掛けていることは、患者さんを自分の最愛の肉親や友人に置き変えてみるという事です。これは治療全般を通じて行っていることですが、痛みを伴う治療や、副作用の出る危険性のあるクスリを処方する場合などは特に慎重に、例えばこの治療、このクスリを自分の親に勧めるだろうかなどと考え、治療を行う上での自分なりの判断基準にしています。

クスリを処方する際もう一つ重要な事は、そのクスリを処方した場合の、患者さんの受けるメリット(クスリの効果)とデメリット(クスリの副作用)を天秤にかけ、そのメリットがデメリットを上回った時だけクスリを処方するという大原則です。

さらにもう一つ悩ましいのは、情報提供の問題です。どんなクスリにも多少の副作用はあります。製薬メーカーから提供される能書といわれる、クスリについての詳細な説明書(添付文書)の中には、ありとあらゆる副作用が列挙されています。これを患者さんが見たら、多分ほとんどの人がクスリを飲むのを躊躇すると思います。しかし何十万人に一人という極めて稀に起こるかもしれぬ副作用を恐れるあまり、有効な治療薬の服用を拒否して病状が悪化したとしたら、それはナンセンスと言われても仕方ありません。

ここはやはり医師が、責任を持ってクスリに関する詳細な情報を収集し、その病気の治療に最適なクスリを選択し、患者さんに誠意をもって説明し、注意深く使用する義務があると思います。

この際、主治医はその患者さんから全幅の信頼を寄せられている事が大前提ですが。目 

増え続ける医療費を何とか抑制しようと、厚生労働省は 2年毎に様々なルール変更を行なっています。

しかし現在の日本の年齢構成の変化や医学の進歩を考えれば、多少の医療費の増加は国民の健康維持のために必要なものであり、医療という業態の持つ関連組織の裾野の広さ、それに伴う雇用の創出などを考慮すれば、厚労省のなりふり構わぬ医療費抑制策には強い違和感を感じています。

世界の先進国の中で、日本の一人当たり医療費は対GDP比換算すると、ほぼ最下位という事実は、最近徐々に一部の国民の知るところとなりつつありますが、まだまだ日本の医療費は高いと誤解している人が大半かなと感じています。

これは勉強不足で怠慢なマスコミが、厚労省の流す偏った情報に対して何の検証も加えず報道し続ける為に起こる、壮大なる情報操作であると感じています。

こんな中、最近の風潮としてどうしても許し難いのは、高齢者に対する配慮に欠けた報道の仕方です。日本が太平洋戦争後の壊滅的な状況から奇跡の復興を成し遂げる為、極度の耐乏生活に耐え、大車輪の活躍をしてくれた恩人たちに対して、医療・年金その他さまざまな場面で 厄介者扱いするような世論形成は決して容認できるものではありません。

高齢者が尊厳を保ちながら、人生の後半をエンジョイし、自分達が長生きすることで若い人達に迷惑をかけて申し訳ないなどと、肩身の狭い思いをさせないような環境整備をする事は、現役世代に課せられた大切な使命であると感じています。

さて話を元に戻しますが、様々な医療費抑制策の中に医薬分業というのがあります。

これは美辞麗句で飾り立て、厚労省が強引な利益誘導の末、成立させた制度ですが 、その思惑は完全に外れ、全国で約7割程度普及した現在、医療費抑制どころか医療費高騰の大きな原因となっています。(役人たちはこの事実を決して認めませんが叫び

詳細は当院ホームページに掲載してありますが、簡単に言うと多くの医療機関が院外処方を採用することにより、門前薬局での支払いが増え、医療費全体が高騰してしまったという事です。

受診する患者さんサイドから見ると、全く同じ治療を受け、全く同じ薬を処方されても、自分のお財布から出て行く負担は、院内処方を採用している医療機関を受診した場合よりも平均で約3割高くなります。医療機関は医薬分業を採用した方が儲かる仕組みになっていますので、最近の新規開業のドクターは、ほぼ100%院外処方となっています。

何だか院外処方の方が、時代にマッチした新しいスタイルで、院内処方は古臭いやり方のように誤解している人が多いようですが、(移動が大変な方が多い)整形外科に通院する患者さんの事を考えれば、3割安い窓口負担で治療が受けられ、天気の悪い日でも院内でお薬がもらえるという院内処方のメリットは計り知れないものがあると思います。

当院では院外処方採用の誘惑を封印し、これからもやせ我慢して、来院する患者さんの為に院内処方を続けて行きたいと考えています。    

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